1.名重太山 míng chóng Tàishān 名は太山[たいざん]よりも重し [訳]名誉は太山よりも重い 2.苛政猛於虎也 kēzhèng měng yú hǔ yě 苛政は虎よりも猛きなり [訳]きびしい政治は虎よりもむごいものである。 3.七十士之徒、賜最爲饒益 Qīshíshì zhī tú、Cì zuì wéi ráoyì 七十士の徒、賜[し]最も饒益たり [訳]孔子の弟子の中では、子貢がもっとも金持ちであった。 4.天下莫柔弱於水 tiānxià mò róuruò yú shuǐ 天下(に)水より柔弱なるは莫[な]し [訳]天下に水よりもやわらかで力のないものはない。 5.過而能改、善莫大焉 guò ér néng gǎi, shàn mò dà yān 過ちて能[よ]く改むる、善[ぜん]焉[これ]より大なるは莫[な]し [訳]過失をして改めることができることは、よいことのなかで最大のものである |
1.百聞不如一見 bǎi wén bù rú yí jiàn 百聞は一見に如[し]かず [訳]百回聞くよりも一度見るほうがよい 2.知臣莫如君 zhī chén mò rú jūn 臣を知るは君に如[し]くは莫[な]し [訳]私のことは閣下が一番よく知っています 3.禮奢而備、不若儉而不備之愈 lǐ shē ér bèi, bú ruò jiǎn ér bú bèi zhī yù 禮[れい]奢[おご]りて備はれるは、儉にして備はらざるの愈[まさ]れるに若かず 礼は贅沢で完備していることより、つつましやかで不備だというほうがまさっている 4.卜筮之、莫如劉季最吉 bǔshì zhī, mò rú Liú Jì zuì jí 之を卜筮するに、劉季の最も吉なるに如くは莫し [訳]これを占ったところ、劉季さんが最吉でした。 |
「不若」のほうは、そもそも日本語の事情で「ごとからず」と読めません。日本語の助動詞「ごとし」には、「ごとから/ごとかり/ごとかる」という語形がなく、この後に助動詞を接続させることができないからです。本来の日本語では「ごとし」は文末に用いられ、他の助動詞、たとえば「ず」と併用するときは「ごとし+ず」ではなく「ず+ごとし」の順序にして「~ぬごとし」というわけです。「不若A」「莫若A」は単に「Aのほうがよい」「Aが一番よい」という意味になりますが、「よい」でなく他の述語を用いて「AのほうがBだ」「Aが一番Bだ」というためには、「不若A(之)B」「莫若A(之)B」のように直後に述語を補います。AとBの関係は主語と述語の関係になるので、訓読では「之」があろうとなかろうと、「AのBにしかず」「AのBにしくはなし」と読みます(上例3-4)。
ただし漢文訓読で「不若」を「しかず」と読むのは、上述のように否定文では意味が変わってくるからです。「ごとからず」と読めないからではありません。「莫若」のほうは「ごときはなし」と読もうと思えば読めるのですから。
1.女與囘也孰愈 rǔ yú Huí yě shú yù 女[なんぢ]と囘[くわい]と孰[いづ]れか愈[まさ]れる [訳]あなたと顏囘とではどちらがまさっておりますか 2.蚤救孰與晩救 zǎo jiù shú yǔ wǎn jiù 蚤[はや]く救ふは晩[おそ]く救ふに孰與[いづ]れぞ [訳]早く救助するのと遅く救助するのとではどちらがよいか 3.關中之食孰若此 Guānzhōng zhī shí shú ruò cǐ 關中の食は此に孰若[いづ]れぞ [訳]關中(地域名)の食事はこれとくらべるとどうですか 4.早救之孰與晩救之便 zāo jiù zhī shú yǔ wǎn jiù zhī biàn 早く之を救ふは晩く救ふの便なるに孰與れぞ [訳]早く救助するのは遅く救助するのとどちらが都合がよいか 5.孰與君少長 shú yǔ jūn shàozhǎng 君の少長に孰與れぞ [訳]彼はあなた(=君)とどちらが年上であるか |
1.王寧亡十城、將亡齊國 wáng níng wáng shí chéng, jiāng wáng Qíguó 王寧ろ十城を亡[うしな]はんか、將[は]た齊國を亡はんか [訳]王様は十都市を失うほうがいいですか、それとも齊國を失うほうがいいですか 2.寧爲鷄口、無爲牛後 níng wéi jīkǒu, wú wéi niúhòu 寧ろ鷄口と爲[な]るとも、牛後と爲る無かれ [訳]たとえ小人物たちのリーダーであったとしてもそのほうがよく、決して大きいものに従属するようであってはなりません 3.禮與其奢也、寧儉 lǐ yǔqí shē yě, níng jiǎn 禮は其の奢らんよりは、寧ろ儉なれ [訳]禮はぜいたくになるくらいなら、質素なほうがよいのです 4.人之情、寧朝人乎、寧朝於人乎 rén zhī qíng, níng cháo rén hū, níng cháo yú rén hū 人の情、寧ろ人を朝せしめんか、寧ろ人に朝せんか [訳]人の情としては、他人を王様にお目通りに来させたいですか、それとも王様が他人にお目通りしに行きたいですか 5.予與其死於臣之手也、無寧死於二三子之手乎 yú yǔqí sǐ yú chén zhī shǒu yě, wúníng sǐ yú èrsān zǐ zhī shǒu hū 予[われ]其の臣の手に死せんよりは、無寧[むし]ろ二三子の手に死せんか [訳]私は臣下に世話されて死ぬより、二三の門人に世話されて死ぬほうがよい |
此龜者、寧其死爲留骨而貴乎、寧其生而曳尾於塗中乎は後半をよりよいものとみなしています。
cǐ guī zhě, níng qí sǐ wéi liú gǔ ér guì hū, níng qí shēng ér yì wěi yú túzhōng hū
此の龜なる者、寧ろ其れ死して骨を留めて貴ばるるを爲さんか、寧ろ其れ生きて尾を塗中に曳かんか
[訳]この亀は、死んで骨を残して尊ばれるほうがいいのだろうか、生きてどろの中でしっぽをひきずっているほうがいいのだろうか
1.與其生而無義、固不如烹 yǔqí shēng ér wú yì, gù bù rú pēng 其の生きて義無からんよりは、固より烹らるるに如かず [訳]義を失って生きながらえるよりは、当然釜ゆでの刑に処されたほうがよい |