『急就篇』が出たのは明治37年、改訂版も昭和8年。中国では清末から民国期にあたり、通貨のシステムが今と異なります。しかし1行目は現在でもこのように言いますのでしっかり覚え、あとはこの時代を扱った小説や映画やドラマなどを見るときに役立ててください。
大陸・台湾・香港とも通貨の基本単位は「元」ですが、同音の「圆/圓」という字でも表記されます。本来はむしろ「圆/圓」のほうが正式なのかもしれません。紙幣には「圆/圓」と書かれています(大陸のコインは「元」です)。外貨取引では他国同様3文字の通貨コードで表記され、通称として“人民元”“ニュー台湾ドル”などと呼ばれます。その状況は次のとおりです。
地域 |
通貨コード |
通貨名称 |
通貨略称 |
補助単位 |
およそのレート(2006年秋) |
大陸 |
CNY |
人民元 |
RMB¥ |
1元=10角=100分 |
13円 |
台湾 |
TWD |
ニュー台湾ドル |
NT$ |
|
3円 |
香港 |
HKD |
香港ドル |
HK$ |
1HK$=100¢(分) |
15円 |
レートは2006年秋のものですが、最新のものが知りたければ、
GoogleでCNY(またはRMB)、TWD、HKDなどと入力すればすぐ出てきます。念のため。
また、「元」は話し言葉では「块(kuài)/塊(ㄎㄨㄞˋ)」ともいいます。この場合「块钱/塊錢」のように後に「钱/錢」をつけるのが普通です。
「毛」は上記のように「角」とも呼ばれます。これも正式には「角」で、貨幣にはそう書かれています。
端数のある金額は最後の単位を省略できます。「一毛五」は「一毛五分」の略です。
「铜子儿/銅子兒」は清末から民国期に通用した銅貨です。
3行目の言い方は1行目と似ていますが、清朝・民国期(国民政府の北伐完了まで)に用いられた銀の単位です。この時代は銀本位制で銀の実際の重さで取引されたので、通貨名称がそのまま銀の重さの単位としても用いられました。1两/兩=10钱/錢=100毛=1000厘(lí)/釐(ㄌㄧˊ)です。最後の厘/釐は日本語の発音にひきずられてリンなどと読まないようにしましょう。また日本とは毛と厘の関係がちょうど逆です。これらの単位は対外的にはそれぞれtael、mace, candareen, cashと呼ばれていました。
また旧英国植民地であった香港では以前は1圓(ドル)=10毫(háo/ㄏㄠˊ)=100仙(xiān/ㄒㄧㄢ セント)という別の言い方もしていました。このように通貨の言い方は時代や地域によって異なるので小説・映画・ドラマなどでは注意すべきです。